いずれ、こうなることはわかっていた。
貴久にはちゃんと話そうと思っていた。
あれから一年くらいは経っていて、貴久が今、千鶴のことをどう思っているのか聞いたこともなかったが、彼が千鶴のことを思っていたことは事実だ。
僕はそんな貴久に対して、罪悪感でいっぱいだった。
『やっぱり聞こえてた?』
「聞く気はなかったんだけど……」
『そう……。天野さんと電話してたんだ』
僕は正直に言った。
「そっか……千鶴ってやっぱり天野さんのことだったんだ」
貴久は寂しそうに俯いて続けた。
「いつから?」
『先週くらい……』
「天野さん……こっちに戻ってきてたんだな」
『うん。こっちの学校に行くことになったらしくて……』
「天野さんから……連絡があったのか?」
『ああ』
貴久は顔を上げて、僕と目を合わせ、作り笑顔を見せながら言った。
「俺じゃなかったか……」

