次の日の朝も、僕が目覚めた時には、千鶴はすでに台所に立っていた。
僕は横になったまま、千鶴の背中に声を掛けた。
『おはよう……』
千鶴はパッと振り返って笑顔を見せた。
「おはよう、智。もうすぐ出来上がるから、歯磨きでもしてて?」
『うん。ありがとう』
僕はこの胸に幸せを感じながら、起き上がって洗面台の方に向かった。
いつもは寝起きで重いはずの体が、ちっとも重く感じなかった。
その日はフレンチトーストだった。
かなりオリジナルな味がしたけど、すごく美味しかった。
千鶴が聞いてきた。
「朝はパン?それともごはん?」
『俺はパン。っていうか朝だけじゃなくってごはんよりもパンが好きなんだ』
「そうなんだ。よかった♪」
『千鶴も?』
「うん。私も」
千鶴はその小さな口を、めいいっぱい広げてフレンチトーストにかじりついていた。

