それから、僕はすぐに千鶴の家を出て、一度自分の家に帰った。

着替えを済ませ、リュックに必要なものを詰め込んでから、またすぐに家を出る。

そして、駅前のスーパーマーケットで買い物をして、また電車に乗った。

僕の地元の駅から千鶴の家の最寄り駅までは、各駅停車でも20分くらいで着く距離だった。

駅を出て、緩い下り坂を歩いて、僕はまた千鶴の家に帰ってきた。

千鶴が、何時に学校から帰ってくるのかは知らなかったが、僕はそれからすぐに夕飯の準備に取り掛かった。

時間も忘れ、慣れない料理に夢中になっていると、玄関の鍵を開ける音がした。

続いて、「智?」という千鶴の声が聞こえたので、僕が手を止めて振り向くと、千鶴は息を切らせて玄関に立ち尽し、肩から掛けていた黒いトートバックをゆっくりと下ろしながら、泣きそうな声でもう一度僕の名前を呼んだ後、その場に力なく座り込んだ。

僕はそんな千鶴の傍にいき、そっと彼女の肩に触れてみた。

千鶴は震えていた。

いつもと様子の違う彼女に、僕はそっと声を掛けた。


『どうしたの!?な、何かあった!?』


すると、彼女は座り込んだまま、僕にしがみつくように抱きついてきた。

顔を僕の胸に埋めて震えた声で言う。


「し、知らない人が私の後ろをずっとつけてくるの……」


『知らない人!?』