ドアを開けると強烈な日光がぶつかってくる。だけど山間にあるだけあって、ここは常に気持ちの良い風が吹いている。ゆっくりと午後が深くなる時間に、通り抜ける風にあたると一瞬の幸せを感じる。

 他のお客さんと同じように、時間がある時には見送って出るのが決まりだ。市川さんがライダー達の相手をしているので、私は地元の二人を送って店の外に出た。

 すると友達のあとを追いながらボロボロの車へ向かっていたシュガーが、くるっと振り返った。

「あの人さ」

「はい?」

 急に言葉をかけられて驚く。足を止めて、太陽の眩しさに顔をしかめているシュガーを見た。

「あの人、ここの店長。あのバイクの男の人が好きなんだな」

 え?

 私は目を見開く。何だって?

 シュガーがニコニコと笑って頷いた。

「久しぶりに見たよ、ああいう人間の顔。後で、食い物美味しかったって店長さんに言っといてー」

「・・・あ、はい」

 じゃあな~、そう言うと片手をあげてのっしのっしと歩いていく。一度凄い音を響かせて、なにやら煙も大量に上げながらシュガーの車は国道へと出て行く。もう今にもエンジンが止まってしまいそうな風体だった。


 ――――――――――あの男の人が好きなんだな。

 市川さんが?

 私は一瞬混乱した頭で考えたけれど、すぐに、ああ、と納得した。そうだった、市川さんは男の人が恋愛対象なんだっておばあちゃんも言ってたっけ。