・・・あいつだ。

 太陽が一番強烈に輝くこの時間に眩しいばかりの光を浴びつつ車から降り立った男は、確かに見覚えがあった。

「市川さん、あの人ですあの人。海辺であった失礼なシュガー男です!」

「ああ、あれが」

 市川さんが頷いたとき、男達は店のドアまで辿り着いていた。

 二人がじいっと見詰める中、ドアを開けて夏の日差しから逃げ、おおー涼しい!と嬌声を上げる男達が、ニコニコと笑っている。

「いたいた砂糖の人!来たぞ~」

「・・・いらっしゃいませ」

 シュガー男が大声でそう言いながら近づいてきたので、私は挨拶をしながらカウンターの中へと逃走する。

 マジで来たのか。何できたのだ!一体何しに?あうあう。

「俺ここ初めて入ったわ~。案外広いんだなー。いつも前を車で通り過ぎるだけだもんな」

 シュガーの連れである若い男が、キョロキョロと周囲を見回しながら歩いてくる。頼んでもないのに二人ともカウンター席に座って、どっかりと日に焼けた太い腕をカウンターに置いた。

 ・・・なんでここに座るのよ。デッキへ行け、デッキへ。

 私はつい胸の中で呪いの言葉を吐いてしまった。

「いらっしゃい」

 市川さんがいつもの笑顔で声をかける。汗だくで日に焼けた男達はこの店では珍しくない。だけど、微妙な知り合いになってしまっているシュガー男が目の前にいるのに、私は困惑してしまった。