その日の午後、2時を回って、店の砂利駐車場に一台のやたらと大きな車が入ってきた。

 ウッドデッキへと出入り出来る大きなガラス戸から見えるその車は、えらく平べったい上にボロボロで、塗装も剥げているし車体には凹凸があり、傷もたくさんついているようだった。

「わお」

 カウンターの中に置いてある椅子から腰を上げて、市川さんが呟いた。

「アメ車じゃん。えーらくボロボロだけど」

 アメ車ってアメリカで生産されてる自動車ってことだよね?私はつられてじっと駐車場の方を見ながらそう思った。

 しかし、強烈なボロさだわ。思わず感心してしまう。だって動くのそれ?って聞きたくなるような外見をしているのだ。実際に道から駐車場に入ってくるところを見ていたけれど、それでも「ああ動くんだ」と言いたくなるような外見。そして、かなり大きい。平べったくて大きい。見慣れないからつい目を見張ってしまう。

 そのボロボロの車のドアがパーンと音がしそうな勢いで開いて、男が二人、真夏の太陽に焼ける地面に降り立つ。その瞬間、私の口から言葉が漏れた。

「げ」

 市川さんが車と男達から私へと視線をむけたのが判った。静かな午後の店内で、他のお客さんは誰もいなかった。ついさっきまでいた旅行中の家族連れの楽しい雰囲気や会話なんかがまだ店内に残っているような感覚があって、私は結構機嫌もよく過ごしていたのに。