私は屈んでお茶のペットボトルを取り出しながら、顔をしかめてあっかんべーをしていた。すみませんね、お邪魔しちゃって。でもすぐに去りますから~。だけどお茶を握ってリュックを持ち、踵を返したところで声が聞こえた。

「あ、砂糖の人じゃん」

 太い声はまっすぐに私に向かってきたようだったから、私は歩きながら振り返る。

 そこにはあの男がいた。

 浮き輪売り場にいて、変な回答をした男。

 塩と太陽に焼けた肌と髪の毛。黒いタンクトップに切り離したブルージーンズ、サンダル。光に眩しそうに目を細めて、自動販売機の後ろから出てきた。

 ・・・げ。あれ、あんただったの。

 私は出かけた言葉を飲み込んで、ただ会釈をする。

 探していた男は女とラブラブの最中だったわけで。・・・まあ、そんなもんよね、そんなことを思っていた。若い男、夏で海。そりゃあ彼女もいるでしょうて。年齢だってきっと私よりいくつか年上だろうし。その瞬間、私の中で彼への興味が一気に薄らいだのを感じた。

 頭を下げただけで歩きを止めない私と、同じ方向に歩きながら、後ろから男が言う。

「うわー、すっげー焼けたね。痛かっただろうそれじゃ。でもまあ~そうなるよな、あんなことしてだんじゃ」

 後ろを歩きながら、水着の私をじろじろと眺めているようだった。何だこの男、ちょっと失礼じゃない?その言い方にカチンときた私はやっぱり前を向いて歩きながら言葉を返す。

「あんなことって何ですか」