電車は海岸線にそって走って行く。きた時には珍しいくらいだった青い海も、今では驚きもせずに見詰められるんだなあ、と思いながら、私は電車に乗り換えた。

 誰にも会わなかった。

 海辺の小さな町はいつもと同じく、人通りはなく、燦燦と太陽の白い光だけが道へと落ちている。影でコントラストが激しい駅の構内に入って、私は電車を待つ間、シュガーの船を探していた。

 一度教えて貰ったのだ。

 岬の高台へ連れて行ってくれたときに、あれがオレの船だーって、シュガーが教えてくれたのだった。

 第一豊饒丸。結局シュガーの名前は知らないままだったけれど、彼がその船でお父さんと漁をしているのは知っている。

 それに船の形も、色も―――――――――

「あ」

 見つけた。

 波をかきわけて進むあの船は・・・。シュガーの船だ!

 漁からの戻りなのだろう。今から港で作業をして船の点検をし、シュガーは街へといくのだろう。一緒に飲む相手を探して。一緒に楽しむ相手を探して。それにもしかしたら、私に会いにライターへ行ってくれるのかも。

 私は胸の前で小さく手を振った。

 彼には見えてないって判っていたけれど。


 バイバイ、シュガー。



 忘れたくても忘れられない出会いを、私は、した。