翌日は朝から昼過ぎまで歩きに歩いて59件ほどのブースで
値段交渉をする。1000本2000本3000本と
まとまるとやっと1個1元。これが限界か?

歩き疲れてベンチで休んでいると、又一軒見つけた。
客が2人いる。ベンチの裏側だ。この客がいなくなったら
覗いてみるかと思っていたら、話し声が聞こえた。

「いくらだった?」えっ?日本語?
黙って成り行きを観察していた。

「前とおんなじ」
「じゃあ、3000本ね」
「そうしよう」

なるほど日本人の行きつけらしい。
一回りしてここを最後にチャレンジしてみよう。

「称好。これ3000本いくら?」
「1個0.3元」
ええっ?1個0.3元?紙に書いてもう一度確認する。

1個0.3元だから3000個は900元。
「間違いないか?」
「間違いない」

0.3元て1個4円50銭。やったー!
小売値の100分の1だ。卸値の10分の1。
ここに決めた。

1袋120個36元。30袋3600個1080元。
即金で払ってざっと検品する。
ずしりと重い。20kgはありそう。

又来年くると言って出た。ここは英語も日本語も通じない。
筆談がベストの商談だった。はたして毎年こうなのかは
全く分からない。ここは中国何が起きるか分からない。

さあ明日は夜行バスで長沙。そこから昆明まで一っ飛び、あこがれの雲南だ!

初めての長距離夜行バス。うわさには聞いていたが・・・・。やっと
乗車時間が来た。5:30長沙⇔義烏5:30とバスの前面に大きく書いてある。
どうも毎晩双方から出ているようだ。見ると、なんと2段ベッド3列の寝台バス。

床には靴を脱いで上がる。通路にも人が寝るのだ。何かあったらどうやって逃げる
のか不安になる。男も女も一緒になって雑魚寝。上から丸見えだ。

こちらの足元に向こうの頭が来るという感じ。暗闇をナイトバスは走り出した。
満月がちょっと欠けたくらいの名月がずっとついてくる。

父母兄姉が見守ってくれているようだ。不思議と死んだ人の顔が浮かんだ。
『夜行バス 父母見守り 一人征く 長沙の山並み 月の影の冴やけさ』

真夜中の休憩トイレは、お見合い連れウンコトイレだった。