「おい!ちょっと待てよ」

ドアに手をかけた由香を
ギリギリで引き止めた

由香は一瞬驚いた顔をしたが
すぐ下を向いてしまった

でもそんなの気にしている場合じゃない
俺は由香が逃げないように片手で
手首を掴み
もう片手で由香が持っていたお盆を
テーブルに戻した

「今のどういうこと?」

俺は自賛していいのだろうか

「……」

お前が俺を特別に思ってるって

「俺しかしないって」

「……気づいてくれなかったんだもん」

まだ下を向く由香

「私……峯岸くんがす」ガバッ

由香を強く抱きしめた

言い終わるのを待てなかった

それは俺が望んでいた言葉だったから

「由香」

ビクッと震わせた由香


「俺はあのときから人を愛せなかった
でも今なら今なら言える」

顔を上げた由香は少し涙目になっていた



「俺は由香が好きだ」


そう言うと由香の目から大粒の涙が
溢れてきた


「私も峯岸くんが好き」


俺達は休憩時間が終わるギリギリまで抱きしめ合った







END