授業はまだ終わっていません                ~青春は理科室にて~

「ありがとう助かったわ。植田さんごめんなさい、私少し急いでるの。」



口早に言う亘理先生は、私がいつも苦手意識をもっている先生とはどこか違っていて何だか弱々しく見えた。



「あっ、はい!私は大丈夫ですから行って下さい!」


「ごめんなさい。また学校でね。」



私は屈んだまま、廊下を早足で去って行く先生の後ろ姿を消えるまで見送った。






もしやあれは、私に泣いてたことを悟られないように、逃げたってこと?

きっとそういうことだよね?






何があったんだろ?



立ち上がり、先生が出てきた病室の名札を見上げた。


そこには、『亘理孝太郎』と書いてあった。




「亘理…」




先生の家族かな?



悪いと思ったが好奇心には勝てず、扉が開いた病室を怪しまれない範囲で覗くと、そこは個室らしく、奥のベッドにはカーテンが引かれていて誰かが寝ているようだった。


きっと、泣いていた理由は家族のことなんだろうな…


そう思うと病室を覗いてしまった罪悪感がどっと押し寄せてきた。