授業はまだ終わっていません                ~青春は理科室にて~

「いっそ、部活でも始めるか?」



先輩の思いがけない言葉に自転車を押していた足が止まる。


「えっ?」



「理科部とか実験部とか第二理科室を使う理由があれば、こそこそする必要も誤魔化す台詞も考えなくて言い訳だろ?」


「先輩、それです!部活作りましょう!」



先輩はたまに鋭いことを言う。

ナイスアイディアじゃないですか!



「でも、部活やるとなると部員が最低5人と顧問になってくれる先生も必要だぞ?」


「私と桃先輩、あとの3人は名前だけ借りて幽霊部員になってくれる人を探して…」


「幽霊部員なら直ぐに見つかりそうだな。」


「問題は顧問の先生ですね…」



顎に手をやり、誰かいないかと頭を巡らせるが、直ぐにはパッと思い浮かばない。



「理科の先生は、殆ど何かしらの顧問になってたはずだけど…あとは亘理先生くらいだろ。」


「亘理先生か…」





生物学を教えている若い女の先生で、美人。
スラッとしていて、胸もでかい。
長いストレートな黒髪、唇の斜め下に黒子、いつも白衣を来ている。
それが亘理先生と聞いて頭に浮かんだ絵だ。



ここまで話すと幾人かは、フェロモン溢れるキャピキャピした先生を想像させてしまうかもしれないが…


実際は女王様と言った方がピンとくる風貌だった。


エロい意味ではなく、オーラそのものが女王様なのだ。


切れ長の目に睨まれたら、それまで騒がしかった教室が水を打ったかの様に一瞬にして静まり返る。


試験も全教科一厳しいと評判だ。


数学とか英語より厳しい生物学っていかほどなのか…


亘理先生とは廊下で数回すれ違った時に挨拶をした程度で、話したことはなかった。
より一層承諾してくれる望みは薄いだろうな…
断られるのは目に見えているから、どう説得を考えるよりも他の先生に頼み混んだ方が早い気がする…