「…じゃあな」
頭から手が離れ、結城くんが背中を向けて歩き出す。
それはまるで、〝別れ〟のようで。
もう、このまま会えない気がする……。
遠ざかっていく、結城くんの後ろ姿。
今までの私なら、きっとそれを見送ることしかできなかった。
でもね、私、気づいちゃったんです。
結城くんに頭ぽんぽんされても、全然怖くなかった。
ちっとも、嫌じゃなかったんです……。
「……うぅっ……。
行かないでください、結城くん……っ」
気づけば言葉が口を突いて溢れ、いつの間にか溜まっていた涙がポタポタと床に落ちた。
しゃがみ込んだまま、涙がこれ以上溢れないように膝に顔を埋める。
だけど、涙は止まってくれなくて。
……情けない。
さっき逃げ出した私のことを、結城くんは助けに来てくれたのに
私はいつまで経っても弱虫で。
いつも逃げてしまって。
「怖がりで弱いせいで……、嫌な思いさせて、ごめんなさい……っ」
いつまでも2年前のことを引きずってる
全部全部、弱虫な私のせい。
あの後だって、結城くんを避け続けたまま卒業したんだ。
結城くんが私のことを好きじゃないって、
なんで私はそこばかり気にしてたんだろう。
「こんな弱虫だけど……、結城くんと、お友達になりたいです……っ」
前みたいに、話せるようになりたいんです。


