「未央ちゃん、どうした?」
突然聞こえてきた声に、私ははっと我にかえる。
「あ、あっ、なんでもないですっ。
ごめんなさい、ちょっとボーッとしてました」
慌てて笑顔を取り繕うと、春樹くんが微笑み、ツリーに視線を向けた。
「何かあったら、言ってね」
「はい…」
優しい春樹くんの声に、なぜかきゅーっと胸が痛んで
それを隠すように私もツリーへと視線を向ける。
キラキラ輝くイルミネーションが、目に沁みて。
その時、不意に、手と手が触れ合った。
一瞬、ドキッと心がざわついたけど
数回触れ合ううちに
春樹くんが私の手をぎゅっと握った。
でもなぜか、私はその手を握り返すことはできなくて。
ふと、隣に目を向けると、そこには、イルミネーションの光を浴びながらそっと微笑む春樹くんがいる。
もしも……
もしも、このまま
春樹くんと一緒に時間を過ごしたら
私は恋というものを
知ることができるんでしょうか───……。
* * ・ * ・ * *


