運命のブレスレット

かずくんの話はこうだった。


かずくんが私の、自転車に乗った後ろ姿を見た後、いつものように大谷家の前を通りかかると珍しく橘さんがいたから挨拶をしたそうで…


『おはようございます。』

『これはこれは三宅様、おはようございます。』

『今日は一段と疲れていらっしゃいますね。』

かずくんは橘さんがかなりやつれてるように見えたらしく、思わず声をかけてしまったみたい。

『はい…。実は今、私は本当に困っておりまして。』

『な、何にですか？』

『他でもない…お嬢様のことでございます。三宅様は、先程自転車で走り去っていく後ろ姿を御覧になりましたか？』

『はい。…偶々なのですが。』

『お嬢様は本当に車が嫌いでいらっしゃいまして、私が毎朝お車を用意しておりましても乗ってくださらないのです。』

『なるほど。そうなんですか。』

『こんな言い方をしては失礼なのですが、三宅様は男性でいらっしゃいますのでご自分の身はご自分でなんとかお守りできることと思いますが、お嬢様は女性の方なのでやはりお車の方がこちらとしても非常に安心なのでございます。』

『それはそうですよね。』

『はっ！すみません。私としたことが三宅様を引き止めて立ち話をしてしまいました。』

『いえいえ。』

『では三宅様もお気をつけて。』

『ありがとうございます。さようなら。』


どうやら橘さんとこういう会話をしたらしい。