運命のブレスレット

そして昼休みになり、中庭で夏帆とお弁当を食べることになった。


「で、萌南は誰を探してたの?」

「えっと…。」


これを話すのには正直かなりの勇気が必要だった。

だって今までにこのことを話したのは、関西にいる私の従姉妹だけだったから。

私が探してたのは他でもない、こっちに戻ってきてから一度も会ってないーかずくん。


実は、私が関西の方に移る前に、かずくんに渡したものがあるんだ。

「かずくん、あたしもう帰ってこないかもしれないけどね…。あたしのこと忘れないでほしいなぁ。」

「僕は萌南ちゃんのことは忘れないよ。」

「でも忘れるかもしれないでしょ?だからね、はい!」

そう言ってかずくんに手渡したのが四つ葉のクローバーと赤い小さなてんとう虫のついたブレスレット。

お母さんに頼んで作ってもらったんだ。

「これ、僕にくれるの?」

「あげるけど、その代わり、あたしのこと忘れないようにずっとつけててね。」

「分かった。」

「ずーっとだよ?」

「はいはい。分かったって。」


そう言うかずくんの右手首につけたブレスレット。


少なくとも私たちの見送りの日まではずっと付けてくれてた。


でも、あれから10年近く経って、まだ付けてくれてるかな?