「だってさー舞桜ちゃん、なんで野々村さんが委員長やりたいって言ったのか分からないんでしょ?
それじゃ、全然お互いのこと知らないのと一緒じゃん。
私、どうしても野々村さんが、自ら立候補した理由を知りたかったのにさ。
だから昨日、舞桜ちゃんにも聞いてみたんだよ?
それなのに、結局分からないって言われちゃったんだもん。
ほんと困っちゃったよねー。」 


授業中にも関わらず、後ろを向きながら話す川崎さんが、そんなことを気にする様子もなく、それどころか更に顔を近づけて、さっきよりも遙かに小さい声で私にこう呟いてきた。


「あのね、舞桜ちゃんにだから言っておくけど、私ね、松下君のこと、好きっていうか、ちょっと気になってて‥。
だからなの。
もしかして野々村さんも、松下君のこと狙ってたりするのかなーと思って、昨日探っちゃったの。
だってー、一緒に委員長やるとか、一番怪しいじゃん?
逆に、好きとか、そういう理由じゃなきゃ、絶対立候補なんてあり得ないもん!!」