夏の前の日


「ちょっと喋らん?外、行こうや」

「ごめん。男と絡みに来とるんじゃないけん」


ご丁寧に断られてから
また俺に背を向ける。

クラブに居る女なんて、
尻軽のビッチばかりだと思っていたのに
ーーー覆った瞬間。


ダラリと伸びた左手の薬指には
1粒のダイアが輝く
シルバーのリングがはめられていた。

俺の目を見て話していたのに
その大きい瞳には
ひとつも俺なんか写っていなかった。


「お姉さんさ、ジャンキーっしょ」

「ーーーっ」


黙って、また振り向く。
このときには既にやられていた。

何でもいい。
この女と話したい。
この女のことが知りたい。


「いいの持っとるけん。
 男おるんじゃろ?2人が嫌なら
 俺ん連れも呼ぶよ」

口実はなんでもよかった。

2人がよかったけど、シンは
キャッシャーで死んでるだろうし
居ても居なくても一緒。


俺はこの女の腕を掴んでから
外に連れてでた。