夢を見た。
あのときの、夢―――
「ユウ、リン東京行こうって思う」
また始まった。
半年前にもこんなことがあった。
言い出したら聞かないリンを
止めるために毎週旅行へ行った。
大阪に福岡に愛媛。
広島が嫌だって、それだけの理由。
なにも不自由なく
隔たりのなかったリンは
周りのシガラミが嫌だったらしくて
「は?なんで」
「モデルに誘われたの」
去年の9月の話。
数か月前からケンカばかりで
俺は相変わらず女遊びをしていた。
「いい加減にしたくって。
自分のやりたいことしたいし」
「ユウもリンじゃなくて
よさそうじゃん。
もう、しんどいから」
「―――っ」
何も言えなかった。
好きなのはリンだけって
今更言っても無駄。
こんなこと初めてだった。
数日分の荷物を持って
実家に帰ったりはあったけど
別れを告げられたのは初めてだった