「おはよ〜」
「…おはよ…ございます」
声をかけてくれたのは
昨日のネイルの、女の先輩
今日、初めての
学校での会話
皆、アスファルトの上に
腰を降ろしたまま
また、顔を戻して
取り留めのない会話を続ける
… それ以上何か
声をかけられる事もなくて
わたしはなんだか
顔が熱くなるのを感じながら
壁を背にして、急いで座った
風の中
ヒザの上で 拡げるお弁当 ――――
… もう、食べる場所なくって
どこか、別棟とか
おトイレで食べるしかないのかな
…そう、思ってたから
泣きたいみたいなキモチと一緒に
すごく、ホッとする…
「お!スイ、弁当か!」
低い、男子の声
ビクッとして顔をあげると
昨日はいたけど、あまり話さなかった人が
パンを食べながら、覗き込んで来た
「は…ぃ」
「パンやるけん、一個くれ」
「え!俺も!」
「皆、忘れたと…ですか?」
「うちのお母しゃん、作らんけんがら」
「おいんとこも」
「食堂な、色々いてせからしかし」
「な〜」
「そいくらいにしとき!
スイのお弁当なくなるやろ!」
「え〜」
急に囲まれた、賑やかな笑い声
お弁当箱を見ると
玉子焼きとか、煮物とかが
なんか全部、キレイになくなって
その代わり、色とりどりの
豪華なサンドイッチとか
チョコとかクッキーで
ヒザの上が、いっぱいになってた


