Crystal Sky 〜お姫様は、魔法使いに恋をする。〜




ごとん と

古い揺りカゴみたいに
一回、船がゆれて


右と左の座席から
荷物を担いだ大人の人たちが
真ん中の通路に集中する


わたしは時間、まだあるし
空くのを待って、後に出た




「…ぅわ〜 まぶしぃ」


海の上を 渡す桟橋

視界をうめる、アスファルトに白に
太陽の光が 照り返してる




今いる場所から見えるのは
窓がいくつもある、円形の券売所と

左には山


街路樹の隙間から歩道


大きな道路


そして、商店街 ―――




この街が『カステラ』で有名なのが
関係あるのかわからないけど
どこからか毎朝、甘いかおりがして来て


その風に乗って
桟橋公園の向こうを走ってる
路面電車の音が届いた




――― もう、近い


停留所の列、一番前に、一度走って
わたしはくるくる、辺りを見回す



「 スイ!」


「―― カコちゃん!」


「おはよ〜」


「おはよ!!」


列のちょうど、真ん中辺り
三個上の友達 カコちゃんが
ニコニコ笑いながら、手を振ってくれた