胸のドキドキ…やまない…
暑いからじゃないのは
自分でも、わかってる…
ジッと見てたら
"ん?"って魔法使いは 顔をあげて
汗で濡れた前髪、かきあげながら
なんか… すっごく綺麗に
だけど男…男っぽい?感じで
パッと 目が動いて、にこ って、笑った…
死ぬ…
「兄ち、東京からきなさったと?」
「はい」
「おなまえは?」
「真木 空哉と言います」
「そげんかぁ
兄ち、ご飯、食べるか?」
「いいんですか?」
「よかよぉ
嬢ちゃんも、食べるか?」
かっぽう着の裾を押さえ、ゆっくりと
膝から立ち上がったおばあちゃん
もう台所に 歩いて行っちゃったけど
その背中に向かって、一回 頷く
「メシ、食ってなかったのか」