"隠し包丁"
"ダシ汁は、昆布"
"油揚げには一度、お湯をかける"
全部、下ごしらえをして
鍋から湯気があがり始めた頃
お母さんが小さく
歌を唄いはじめた
「… お母しゃん、そん歌 好いとう?」
「うん〜
――… 彗?」
「ん?」
「… 彗ば、小さい時
お母しゃん、畑げな忙しくて…
運動会…行っちやれなくてすまんな」
「へ…? 気にしとらんよ〜
そいに毎日、お弁当作っちくれとうもん」
だって
お母さんのお弁当がなかったら
わたしは 学校
とっくに通ってなかったかもしれない…
「やい、これ煮込んでる間に
玉子焼き、作っちおこう」
「うん…!!」


