「… スイ
何ひとりで呻いてんだ?」
「―― へ?!
な…ななな、何でもなかよ?!」
グラスとか持って
居間に戻って来た魔法使い
わ…わたし、うめいてたんだ?
は、恥ずかしか…
「フキン退けろ」
「う… うん」
テレビの前のちゃぶ台
楽しい
すき焼きの用意が始まった ―――
「若い人はぁ
お肉食べたかちゃろうと思っち
ちょこっと買っち来よるんよ」
「言えば、オレが行ったのに」
「お兄しゃんな
料理した事なかやろう!
そげな男ん子に選ばしぇるげな
出来まっしぇんよ」
「あははは」
魔法使いは、舌を出して
困った顔して笑いしながら
ちゃぶ台の前に、大人しく座る
「スイ、それなんだ?」
「へ?」
視線の先は、わたしの横
ちょこっとキョロキョロしてから
『それ』が何か、やっとわかった
「ウキワ?」
「う…うん!貰うて来た…」
差し出された手に
折り畳まれた、オレンジ色を渡す
「膨らませていいか?」
「うん!」
「結構デケーな」
どんどん膨らんでく浮輪
早い
これ… 絶対に空気抜かん…
そんなこと思って、ぼーっと見てたら
お皿が割れる ガシャンて音 ――――
「… バーチャン?!」
「――― おばいちゃんっ?!」


