「やめて!」 精一杯に叫んだつもりなのに なぜか乾いた他人の声に聞こえる。 私は力を振り絞って足を一歩前に出すと フラリと後ろの気配も先に回り 私の目の前に立ちはばかる。 それは 髪の長い 真っ白い着物を着た女。 身体全体が薄汚れて ニヤリと笑っている女。 狂気の笑いを私に向けている女。 そして 右手のない女。 「いやー!」 今度は大声を上げて 私は外に飛び出した。 誰か……誰か助けて。 助けて! 助けてっ!!!!