「ひっ!」
自分の声に驚きながら、あわてて冷蔵庫の扉を強く閉める。
心臓がハンパないくらいドキドキして
色んなものが胃から逆流しそう。
そんな事はない。
目の錯覚か
まだ寝ぼけているんだよ
深呼吸して
もう一度
冷蔵庫の扉をゆっくりと開けると
髪の毛の束はなかった。
やっぱ寝ぼけている。
あー情けないわー。
ため息を出してホッとしていると
急に
背中に冷水をかけられたような気味の悪い悪寒を感じた。
「ねぇ……探して」
ザラザラとした低い声と吐く息が首筋にまとわりつく
振り向いてはいけない。
早く逃げなきゃ。
あぁ……
逃げなきゃいけないのに
膝のガクガクが止まらない。
「探してよ」
まだいる!
震えが止まらない。
得体の知れないモノに、身体ごと包まれている。
首筋に何か冷たい物が触れる。
じっとりとした
カラスの羽のように黒い髪が
濡れた長い髪が
私の首筋に張り付き、蛇のように唇に向かって上ってきた。