瑠璃姫は、道中駕籠に乗り、
花嫁行列を成して、
住み慣れた館を出る。

耶介(やすけ)が、
控え目に頭を下げていたのが、
駕籠の小さな窓から見えた。


耶介は、乳母(めのと)の息子、
乳兄弟だ!


二つ歳上の兄のようなだった……。
幼きおり、

「耶介兄じゃ、
妾は、兄じゃの嫁御になりたい!」

と、真剣に申したのだが、
耶介は、

「姫様と某(それがし)とは、身分が違いまする。」

と、にっこり笑顔で、
とりつく島も与えなかった……。

あの日以来、
秘めた初恋は、
もろくも崩れ去ったのじゃ……。

駕籠の小窓から見える全ての光景を
眼に焼き付けて、
瑠璃姫は隣国に嫁入りした。

隣国に入り、
我が夫となる殿は、
跡継ぎと黙されている。

婚礼の儀で、
初めて見たが、

なかなかの美男子じゃ♪

控えの間で、
実家からの侍女、
かえでに色々聞かされた!

「姫様!」

「まだ有るのか?」

うんざりしながら、
聞いている!!

急にかえでは、
小声になった!

「おなごの戦(いくさ)は、
婚家での世継ぎをあげる事をぞ!
仲むつまじゅう……。」
と、釘をさされた!