だが、
秘めた初恋の、
終止符をうつ日が、
とうとう、
来てしまった……。

父上に呼ばれ、
部屋に入ると、
いつもと違う緊張感で、
張りつめた空気に、
姫は思わずゴクリと唾を呑んだ。

「そなたの縁談が決まった。
隣国になる。
良いな?」

有無を言わさぬ父上に、

「はい……。」

と、姫は小さく頷いた。

「ここは、先々代から、
しばし小競り合いのあった国なれど、
手を組めば、
後顧の憂いを断てる……。
分かるな?

戦(いくさ)にならぬよう、
しかと頼んだぞ!」


「はい……、父上……。」

婚姻は、昨日の敵を
味方につける1つの策である。

姫には、隣国の夫となる当主を、
懐柔出来るかは、
姫の裁量にかかっている!!

そして、嫁入りというのは表向きの人質でもあるのだ。

2度とこの地を踏めぬやもしれぬ……。


思い詰めた表情の瑠璃姫を
私は、斜め後ろから覗き見て、
何とも痛々しかった……。

これって……、
イマドキの嫁入りした娘が、
近所の親の家に、
しょっちゅう入り浸っているのとは、
訳が違うってことかしら?

まるで外国に嫁入りするみたい……。

隣国って、
隣の市町村みたいな近さだと思うんだけれど……。

瑠璃姫、可哀想……。

目の前に、
大好きなツンデレ耶介が、
居るというのに……。