お気に入りのコンパクトミラーで最終チェックをする。 (大丈夫、きっと上手くいくわ!) 大きく一つ息を吸い込んだ。 「よしっ!」 「本田様。お連れ様がお着きになられました。お通ししても宜しいでしょうか?」 一気に緊張感が増した空気の中、あえて一呼吸置いた後、返事をした。 「はい、どうぞ。」 「失礼します。」 その時、ドキドキと煩くなる鼓動とは別に凛とした、涼やかな声が私の中に響いた。