私は久し振りに、黒木結婚相談事務所のソファーに座っていた。
急な来訪にも嫌な顔一つせずに黒木先生は迎えてくれた。
「黒木先生、愛する人に先立たれたら、人はどうしたらいいんでしょうか?………………幸せになって欲しい人がいるんです。」
「う~……ん。別れ方が急すぎて心の準備が出来ていないと、強烈にその哀しみは心に残ってしまいますからね。いつまでも過去に囚われてしまいます。きっと、いまだに家族を守れなかった自分を責めているのでしょう。他の人に目を向ける事=罪だと思ってしまう。だから、わざと幸せにならない道を選んでる人は多いです。」
「そうですか………。どうしたらいいんでしょう?私に何か出来ませんか?」
「花枝さんには、どうしようもありません。誰か彼を本気で思ってくれる人が一心にぶつかってくれるまで、過去の呪縛からは逃げられません。花枝さんと千春の様に。それに、彼だけじゃありません…そうゆうパートナーや家族を無くして消失感に苛まれている患者さんは多くいます。一人で立ち直った方もいますよ。一回、私の所でカウンセリングを受けてくれたらいいのですが…。」
「う~……ん。………さすがにそれは言えません。」
「ですよね………。それじゃあ、あなたに出来る事は残念ながら見守る事だけです。でも今回、花枝さんに話したことで少しは救われたと思いますよ?」
「……気を使って頂いてありがとうございます。」
「どういたしまして。」
黒木先生の魔法の言葉と笑顔で、少し落ち込んでいた気持ちが浮上を始めた。
私はこの日、心に決めた。
少しでも白川部長の役に立てる様に、笑って喜んでくれる様、力になることを。



