それでもあなたと結婚したいです。


私の両腕をきつく掴んで、白川部長のこんな必死な形相は見たことが無かった。


「す…すいません………。」


「何処も………怪我してないか?」


黙って頭を縦に振ると、勢いよく抱き締められた。


「ぶっ部長っ!!あっあのっ!!」


「よかった………本当によかった………。」


とっさに離れようとしたけれど、『よかった…よかった…』と肩口から聞こえてくる声が震えていて、どうしても離れられなかった。


(きっと今、家族の事を思っているんだ………。)





会社の前にある公園。

私達はそのまま帰れなくて、ベンチに座っていた。


「赤坂から俺の話、全部聞いちゃったんでしょ?さっきあいつが電話してきた。」


「すいません。勝手なことして………、触れられたくない事は分かっていたのに…。」


「いいんだ………。君を騙して迷惑を掛けていたのは事実だし、ちゃんと話さなきゃいけなかった。初めて君が俺に自己紹介した時、名前にも驚いたが、若くてキラキラしていて凄く眩しくて、君が娘だったらと思ってしまったんだ。だからずっと言えなかった。」


「奥様と娘さんを愛してたんですね。」


「俺の全てだった。あの時は全てを認めてしまったら哀しみに押し潰されそうで、どうしても出来なかった。唯一、仕事に打ち込むことで忘れた振りをしていたんだ。でも、ある日、君が現れた。真面目で明るく、自信に満ち溢れて幸せそうな君を見るのが嬉しかった。まるで成長した娘に出会えた様で………だから、君には幸せになって欲しい。ずっとそう思ってた。」