「それなら、俺からは何も言えない。他人が話すにしては重すぎる話だし、手軽に話せる内容じゃない。」
赤坂部長が言っていることも分かったが、私はどうしても譲れなかった。
「私は秘書課に配属されてからずっと白川部長の元で長年連れ添って来ました。私が前秘書から引き継いだ時から白川部長は仕事も出来て、女子社員からも注目の的でした。私も何度も失敗をカバーして貰ったり、気を使ってくれて、私の今が在るのは白川部長のお陰だと思っています。………だから、時々寂しそうな苦しそうな笑顔を見るのが辛いんです。………だから、赤坂部長………お願いします………。」
深く腰を折って自分の気持ちを伝えた。
赤坂部長は暫く考えるように沈黙すると、ゆっくり口を開いた。
「………………あいつの奧さんと娘は事故で亡くなったんだ。」
「!?」
「あれは結婚三年目の冬だった。白川を迎えに向かう途中、信号無視したトラックに突っ込まれて…即死だったそうだ。葬式は家族で密葬したみたいで、会社には届けは出さなかった。仕事の関係上、社長には報告しないわけにはいかなかったから話したみたいだけど。最初は私にも秘密にしていたんだ。でも、気づいてしまうんだよ…近ければ近いほど………。」
当時の事を思い出したのか、赤坂部長の顔が初めて大きく歪んだ。
「………でも、どうして会社に秘密にしたんですか?」



