呆然と廊下を歩いていると目の前で営業一課の赤坂部長と秘書の佐藤さんが歩いてきた。
廊下の端に避けて一礼して通り過ぎた時、二人のやり取りが聞こえてきた。
「佐藤くん、いつもの店予約しといてくれないか。」
「白川部長とですか?」
「あぁ、久し振りに飲む約束を取り付けた。」
「嬉しそうですね?」
「同期の中でも、あいつは苦楽を共にした親友みたいなもんだからな!はははっ!」
「赤坂部長、私はこのまま一旦秘書室に戻りますので御用の際はご連絡ください。」
赤坂部長は頷いて自室に入って行った。
一人になった廊下で、私は赤坂部長の自室の扉の前に立っていた。
(もしかしたら………知っているかもしれない。)
私は半ば駄々をこねる子供の様に意地になっていたのかもしれない。
勢いだけでその扉を叩いていた。
「失礼します。」
私に目を向けた赤坂部長は、少し驚いた顔をして口を開いた。
「君は………確か…白川の………」
「はい。急にこの様な失礼をして申し訳ありません。担当秘書の泉 花枝と申します。」
「白川の使いか?」
「いえ、どうしても聞きたいことがあるんです。」
「俺に答えられる事なら答えよう。」
作業していた手を休めて腕を組むと、赤坂部長は私の方に向き直った。
「白川部長はどうして独身を隠しているんですか?」
「……………誰に聞いた?」
「確かな情報です。白川部長に直接聞いてみましたが妻子はいる、としか話してくれなくて………。赤坂部長なら知っているかと思って。」



