翌日の定時後、私は意を決して白川部長の部屋に向かった。
コンッ コンッ コンッ
「失礼します。」
白川部長はいつも通りパソコンに向かって仕事をしている。
「部長、定時になりました。休憩をどうぞ。」
コーヒーに甘いチョコレートを添えてデスクに置く。
「いつもありがとう。」
「…………………………。」
「……ん…………?どうかしたの?」
私の異変に感ずいたのか、パソコンから目を外して私に視線を向けている。
「白川部長………聞きたいことがあります。」
「花枝ちゃん真剣な顔してどうしたの?俺何か怒られるような事、しちゃった?」
「本当は…………独身なんですか?」
「…………………………………………。」
私が聞いた途端、部長の瞳から色が失せた。
私の表情から何かを読み取ろうとしているのか、沈黙になる。
「部長…。何とか言ってください。信頼されていると思っていたのは私の勘違いだったんですか?!」
「俺にはちゃんと妻と子供がいるよ………。」
「嘘ついてもダメです!ちゃんとした人からの情報ですから、ちゃんと答えてください!!奥様も娘さんも本当は居ないんでしょ?!白川部ー」
「それ以上言わないでくれ…………君にそこまで言われる筋合いはない。」
白川部長は何かから逃げるのを必死で堪えているように拳を堅く握って、強い瞳を私に向けていた。
ドクドクと鳴る心臓は極度の緊張を表している。
初めて見せたその強い視線に私は怖くなった。
「出てってくれないか………。仕事が立て込んでるんだ。」
居た堪れなくなった私は、その場から逃げるように立ち去ることしか出来なかった。



