「………誰の事考えてたの?」
首筋に顔をくっ付けたまま、モソモソと喋る仕草が愛しくて自分からも彼の背中に手を伸ばした。
「白川部長の事。」
「白川部長?何かあったの?」
「実は………独身らしいんです。」
「えっ?部長さんが?」
「私、長年一緒に居たのに、ずっと知らなくて…ビックリしちゃって………。」
「らしいって………それ、誰から聞いたの?」
「今日、桐島社長にたまたま聞いてしまって…。私が知ってると思って話したみたいで………」
「彼に会ったの!?」
急に身体を離した千春さんは、眉間に皺が寄っている。
(あっヤバ…。)
「たまたま、マーケットでバッタリ…ぐっ偶然!!」
(私を見つけてわざわざ来た事は伏せておこう…。)
「ふ~ん……。………で確証ある話なの?他社の人が分かる事かな?」
「それがうちの間宮社長からの情報らしくて……恐らく確実かと。」
「う~……ん、そっか。それで、どうして花枝はそんなに落ち込んでんの?」
千春さんに見透かされたようで、私は白状した。
「私、きっとショックなんだと思う。ずっと教えてくれなかった事に腹を立ててる。」
「うん。」
「秘書の中では、一番信頼してくれてたと思ってたから………。」
言葉に出すと少しずつ胸につかえていたモノが溶け出していく。
千春さんの顔が優しすぎて目頭が熱くなった。
情けなくて下を向くと、暖かい身体がまた私を包んだ。



