カードキーで部屋に入り、ジャケットを掛けようとクローゼットを開けると、花枝の荷物が置いてあった。
「待ちくたびれてラウンジにでも行ったか………?」
携帯で花枝に電話を掛けようとするとドアのノックが鳴った。
「花枝!」
今日一日楽しみで、仕事中も何度も彼女の事を考えてしまった。
はっきり言って気もそぞろだった。
佐伯にも、何度も嫌味を言われた。
でも、そんなこと少しも気にならなかった。
この時間の為ならどんな事にも耐えられると思った。
俺は勢いよくドアを開けた。
「花枝、何処に行ってたの?」
「…………………驚いた?」
ドアを開けて俺の目の前に立っていたのは、紛れもないあの女だった。
あの嫌な花の匂いを身体中に纏って俺を見て笑っている。
「私も今日、このホテルに友達と来てたのよ。あなたの姿を見て、途中で抜けて来ちゃった。………仕事終わったんでしょ?約束より早いけど、せっかくだし………いいでしょ?」
ガチャンと扉が閉まって、俺はまた、この人と二人っきりになった。



