「山本 日登美と言う人でした。彼女は主人に思いを寄せていたんです。それも異常な程の執着でした。主人に振り向いて貰えないと分かると、その思いを主人に似ている千春を身代わりにして遂げようとしたんです。寸での処で私が気づき止めたのですが…………」
「その時、彼はどうゆう状態でしたか?」
「………千春は椅子に縛り付けられて…………布で目隠しをされていました。服がはだけて…………身体中に彼女のリップの跡が………跡が………」
お義母さんはあの日の情景を思い出したのか、言葉に詰まった後、両手で顔を覆った。
「酷すぎる………。」
「漸く分かりました。これで彼の治療が進みます!早速、連絡してきます!」
電話をかけに黒木先生が部屋を出て行っても、暫く私は呆然としていた。
小学生の幼い千春さんがどんな思いをしたのか考えるだけでも胸が痛んだ。
体を縛られて目隠しをされて何も分からない中、それは相当な恐怖だっただろう。
知らない女の歪んだ愛情の慰みものにされたなんてショックで記憶を無くして当然だ。
(今すぐ千春さんに会いたい………。)
私は深く傷ついた彼を慰めたかった。
優しく抱き締めて、彼を傷つける全てのモノから守ってあげたかった。
許せない…………。
それと同時に、私の中で怒りの感情が芽生えていた。