ゆっくりと泉さんの後を着いていく。


「さあ、どうぞ。」


まるで、お姫様をエスコートしてくれる王子様の様にゆっくりとドアノブを引き、ドアを開けてくれる。

どこまでも紳士的で一々キュンとさせられる。

上目遣いでアイコンタクトして、寝室に入った。

振り向かないで、背中で彼の様子を探っていると、また低音の甘い声が響いた。


「それじゃあ、お休みなさい。」


キスの一つもなく、カシャンと音を立てて扉が閉まった。


「………………………………。」



一瞬、何が起こったのか分からなかった。

頭の中はクエスチョンマークが占領している。


「えっ?」


閉じた扉をいくら見つめても、その夜は開くことはなかった。