花束を受け取るとジンと涙が滲んできた。


(うぅ~…、でも、今日は泣かない!!千春さん来てくれたのにメイクが落ちちゃうもの。)


「ありがとう!すっごく嬉しい………。」


千春さんは私に聞こえるように、少し屈んで近づくと囁いた。

「それ以上泣かないで。花枝の涙見ると俺、人前でも我慢できなくなっちゃうから…。」


驚いて目をパチクリ開くと花束の死角で鼻にチュッとキスされた。


(千春さんっ!!)


ドキドキと心臓がうるさく鳴っている。


「さて、お祝いの挨拶はそろそろ終わったのかな?」


不機嫌そうな声に、我に返ると桐島が私達の前に立っていた。

「泉秘書。改めて紹介してくれないか?」


「えっ?あっ!はい!こちらは私の夫で泉 千春さんです。………そして、こちらがM&Jの桐島社長です。」


「会うのは二回目ですね。」


「はい。どうぞよろしく。」


「製菓の調理器具の大手silver millenniumのCEOとは、その若さでかなりの敏腕ですね。」


「いいえ。昔から仕事一筋だったもので、私などまだまだです。」


「桐島社長も既に会社を経営されているじゃないですか。」


「俺は親父の後を、ただ継いだだけなので、なんの能力もありませんよ。」


お互い笑顔なのだが、何故か見えない火花が散っている。


(千春さんまで………なんか、凄い。)