「千春さん!今日はこれからどうなさるの~?」



「クリスタルホテルに予約をしました。」



「そ~う!!当然スイートなんでしょう?」



「ご想像にお任せします。」



「いや~、素敵ね~!奥さんも大喜びでしょう?ねぇ千春さん。どうして家の娘を貰ってくれなかったの~?」



「………すいません。」



「ほら~!千春さんが困ってるじゃないの!もう、やめなさいよ!!」



「さぁ、千春さん可愛い奥様が待ってるわよ!私達に構わず行ってください。」



「それではお言葉に甘えて、失礼します。」



軽く会釈をして、その場を去る。



本当はこのまま自分のマンションに帰りたかった。



「可愛い奥様……か。」



ホテルのガードキーを確めながら、自分の気持ちが落ち込んで行くのを感じた。



「仕事の方がまだ、ましだな…。」



期待していた秘書からの着信は、結局、鳴らなかった。