「そうですね。……スキンシップに関しては泉さんの好きなようにさせてあげてください。なるべく断らないように、受け入れてあげることが大事です。」


(断る余裕ないんでその心配はないわ………。むしろもっと来て欲しいくらい。………でも、いきなり来られても心の準備が………)


「花枝さん?聞いてますか?」


「はっはい!」


「色々妄想して頂いて、現実に生かしてくださいね!」


意味深な笑みで私に念を押す黒木先生は、天使の顔をした悪魔だ。


「先生…、ずっと気になってたんですけど聞いていいですか?」


「何ですか?」


私は意を決して質問した。

一度聞いてからずっと耳を離れない名前を。


「木暮 美緒………さんの事です。」


黒木先生はふぅーっと息を吐くと私に向き直って話し始めた。


「すいませんが、実を言うと私は会ったことが無いんです。面と向かって会ったことがあるのは白金くんだけで、私は会う約束を電話で受けて、それっきり彼女は会社を辞めて居なくなってしまったんです。電話の内容も泉さんの病についての事で聞きたいことがあるからってだけでした。」


「そう………なんですか。」