それでもあなたと結婚したいです。


話はシェフから聞いていたけど、実際見るのは始めてだったので、私はこっそり感動していた。


(千春さんは知ってるかな?知らなかったら連れてきたら喜びそう!)


そんな幸せな計画を立てていると勢いよくドアが開いた。


「あー良かった、まだ終わってなかった。」


無作法に図々しく入ってきたのは紛れもないアイツだった。
あの日の屈辱が蘇ってくる。


「初めまして、M&J 社長 桐島 彩矢です。宜しく。」


「社長自らお越しとは恐れ入ります!」


白川部長が空かさず立ち上がり挨拶した。


先方の部長さんは困り顔をしたまま、愛想笑いをしている。

「社長、わざわざいらしたんですか?私にー」


桐島社長は挨拶を済ませると颯爽と私の前まで歩いて来た。

「なんで連絡くれないんだ?」


「はっ!?」


堂々とそれでいて強引に私に迫ってくる。

彼の笑顔は自信が漲っていた。


「おい?聞いてんのか?食いしん坊。今日もガツガツ食ったのか?ここ………付いてるぞ。」


そう言うと驚いて固まっている私をそっちのけで、ごく自然な動きで私に近づくと唇の端に付いたチョコレートをペロッと舐めた。


「………甘いな?」


そのまま耳元で囁く。


バッと耳を押さえたまま私は声にならない叫び声を上げた。

(コイツ!?一体なんなの!?)