それでもあなたと結婚したいです。


試着室の壁に追いやられ千春さんの胸に密着する。


「千春さん?!」


「そのドレス、凄くセクシーで花枝さんに似合ってますよ。」


耳元で囁き出す千春さんに心臓が早鐘を打ち始める。


「でも、…………秘書がこんな格好していいんですか?………それに、ピッタリし過ぎて恥ずかしいし………。」


千春さんを見上げると艶っぽい微笑を浮かべてこう言った。


「さっき、佐伯と手を握り合ってたでしょ?俺を無視して二人で決めて…………これはその仕返し。」


「えっ?それは、ワザとじゃなくて………もしかしてドレスコードって…」


「そう、嘘。」


弁解虚しく腰に回された手が、私を千春さんに引き付ける。

「きゃっ!」


「君は私の妻なんだから他の男と手を握っちゃだめでしょ?………だから、お仕置き…。」


耳から顎にかけてホールドされた状態でどんどん距離が近づいていく。


(あっ、………キス………)


「泉様。………靴とアクセサリー、お持ち致しました。」


不意に扉の向こうから声がして、彼を押して、バっと離れた。


(あの日以来ずっとキスしてなかったのに………急になんなの?!ああー!何人か名前飛んだ!!)


恐らく真っ赤になっているであろう顔を、手で扇いで落ち着かせる。


「奥様、此方のサイズでよろしいでしょうか?」


9㎝はあるビジューの付いたピンヒール。

慌ててその場で履こうとして少しよろけた。


「危ないですよ花枝さん!」


グッと腰を抱えられると先程の感覚が蘇る。


「だっ大丈夫ですから!」


意識して離れたのがバレたのか、千春さんはずっと口を押さえて笑っている。


「何緊張してるんですか?………今は何もしませんよ。続きはパーティーの後で…。」


私はただ恥ずかしくてその後は暫く千春さんに近づかないようにした。

まぁ、夫婦なんだから、くっついててもいいのかも知れないけど私達はまだ………あれなので。