「名乗り遅れて失礼しました。本田 花枝と申します。本日はどうぞ宜しくお願いします。」


「こちらこそ宜しくお願いします。」


こうして始まったお見合いは、お互い仕事柄社交的なので、淡々と進み、初対面にしては思いの外楽しいものとなった。


「そろそろ時間ですね。」


「もう、こんな時間ですか。今日は本当に楽しかったです!」


「私もです。ありがとうございました。」


(結構良い感じに終ったな。話も盛り上がったし。これは…フフッ…ひょっとしたらひょっとするんじゃない?)


「じゃあ、行きましょうか。」


「はい。」



泉さんの3歩後ろをゆっくり着かず離れず歩く。

そう、気分は大和撫子。

艶々に磨かれた老舗の廊下を歩いていると何やら廊下の先で騒がしい声がした。