そんなある日、

陸が、「栄介、俺とタイマンしてくれないか?」と言った。

周りは、陸を止めるが、陸の強い意思は変わらなかった。

「いいですよ。けど…いきなりどうしたんですか?」と、栄介が聞くと、

「彩さんは俺の恋人。けど…最近は栄介、栄介って俺のこと相手にしてくれない。それはあまりにも寂しくて辛いから…だから、俺だって頑張ってる!ってところを見てほしい」と陸は言った。

周りは何も言わずことの成り行きを見守っている。

「なるほど、わかりました。よろしくお願いいたします、先輩?」と、笑みを浮かべて言う栄介に少しひるんだものの、陸は覚悟を決めた。

二人は向かい合い、タイマンという名のボクシングを始めた。

両者共に互角。

お互いが譲らない。

声援が分かれる中、彩が、「陸頑張れ~」と言うと、陸は嬉しそうに、そして、それに答えるように、必死で頑張った。結果は負けたものの、いい勝負だった。

「陸、よく頑張ったねぇ~」と彩が誉めるが、

「俺、情けない。タイマンしろ!!って自分で言っといて負けてるし…悔しい」と涙目で言った陸。

「陸はよく頑張ったよ。ほんとに。今まで負けても悔しいなんて思わなかったでしょ?勝てないことに対して情けなくて泣いたことはあったけど、悔しいって感じたことなかったでしょ?
それを感じれるようになったんだから成長したってことだよ。
これからはもっと試合でもそう、感じて戦ってね。そしたらもっと強くなる」と彩は言った。

「うん、今までは彩さんと一緒にいたくて…それだけでしてたけど、これからはもっと頑張って強くなりますね。栄介にも周りにも認めてもらえるように」と陸ははにかんだ。周りはその陸の笑顔にニコニコしていた。

「栄介、じゃあ、練習戻ろうか?」と彩が笑うと、

「はい、よろしくお願いいたします」と栄介は言って練習に戻った。

陸もつられるようにして必死で頑張った。

「よっしゃ。なら本気でしごくよ。覚悟して。次の大会でヘマかまさないように…」と彩は不敵の笑みを浮かべていた。

「彩さん、その不敵の笑み怖いです」と陸が言うと、

「あら、そう?そんなつもり無いんだけど?」と彩が笑うと、

「そーゆうところですよ」と、栄介が突っ込んだ。

それに対して、間髪入れずに「どーゆうところだよ(笑)」と那須崎が突っ込みを重ねた。

「自覚ないですか?ボクシングに関しては妥協しない、諦めないのはカッコいいところですけど…かなりのドSですよね。彩さんは」と栄介は言った。

「まぁ確かにね~」と那須崎は笑った。

「普段は優しいよ?俺の大好きな恋人」と陸が言うと、

「まぁ、陸さんには甘いですからね。彩さん」と栄介は言った。

「おい?誰がドSだって?私は絶対に違うよ。ただ、勝つためにはこれくらいしないとと思うからそう指導してるのよ?」と彩が言うと、

「けど、理亜さんも、ボスもそんなに厳しくなかったよ?吐くほど練習するのが勲章なんて絶対に言わなかったし!
そこまでさせなかった。
極限まで追い込み練習させて満足してるのは彩だけだよ?
まぁ、みんな必死なってついてきてるから強いわけだけど…」と那須崎が言って

「あー、もう、わかったわよ!!私はボクシングを愛しすぎるがゆえのことよ!!ドSでもなんでも好きに言って!!」と彩は諦めて開き直った。