科学室までもう少し、そんな時に限って私は運が悪い。
「猫?」
廊下途中の保健室から出てきた男子生徒とパッタリ鉢合わせてしまったのだ。
そうだ、そういえば、私は物凄く運が悪かった。道を歩けば、頭上から鉢植えが落ちてきたり、天気がいいなーなんて空を仰いで見れば鳩の糞とこんにちわ。
挙げて見ればきりがないけど、それを運の悪さだなんて認めたくなかった。
だからか、余計現実的な、科学的なものに惹かれた。
でも………
猫になるくらいだし、相当な運の無さなんだろうな。
『はぁ………』
しかたない、こうなったら、一から信じてもらうまで話そう。私には、誰かの助けが必要だ。
『あの………』
「うん?どうした」
わたしは、ゆっくりとその人の足下まで歩いていき、見上げた。
その人は、くせのある茶色の髪、目は大きくてくりくりしてるのに、可愛いよりカッコいいが当てはまる男子だった。
………整った顔の人だな。こんな人、この学校にいたんだ。
いや、入学してからというもの、人というものに興味がなかったし、この人に限らず、私にとって、皆知らない顔だ。


