ー敦賀side


「変な女………」


訳のわからない事を言って走り去った女の背中を、呆然と見送る。


あの子、同じクラスにいたような…
あぁ、そうだ。藤森…なんだっけ。


確か、あんまりクラスには馴染んでない、静かな子だった。



「にしても………あの子、俺の事知らないのか?」


この学校では、面倒なくらい女が寄ってくる。母親譲りのこの整った顔のせいだ。


自分を誉めてる訳じゃないけど、よく女子受けする顔らしい。カッコイイなんて、聞き飽きるほどには、言われてる。



「くくっ、なんか、新鮮」


俺の事を知らない女。色目使って近づくどころか、逃げ出した女なんて、今までいなかった。



女が落とした傘を拾いながら、いつの間にか自分が笑っている事に気づく。


ーまた、会いたい。


素直に、純粋にそう思った。