ひとりポツンと残された羽実のところに斗士が戻ってきた。



「待たせてごめんっ!」



全力で走ってきたのだろう息を切らしながら羽実に駆け寄った。そんな姿を見て羽実がクスクス笑う。



「なっ!なんで笑ってんの!」

「えっ!あっ ごめんなさい面白くて…」

「大変だったよー!山田達うるさくて!」

「山田くん達元気だもんね」



クスクス笑う羽実を見ていたら苛立ちさえなくなってしまう。斗士は結びあげた羽実の頭を優しく手でなでた。



「なんだよ 彼氏持ちかよ」



外野からそんな台詞が聞こえ、斗士は辺りを見渡した。羽実にも聞こえていたらしく肩が震えていた。



「実はさっき…トシくんが離れてすぐ
男の人たちに囲まれて …」

「えっ?!ほんと?ごめん…」

「大丈夫…トシくんすぐ戻ってきてくれたし
でも…少し怖くて…」

「少し人少ないところで休もうか」



怯える羽実の肩を抱き、屋台の列から外れ近くの神社の方へと歩いて行った。