【短】初恋ラビリンス

「...なら、ついてこいよ」

陽に小さな声で言われ、手を引かれた。

ゆっくりと、それでいて急いでいるように歩いていく。


「ちょっと待ってよ!
どこに連れていくつもり?」

「行けばわかる」

私の質問に振り返って答えた陽。

足は止めずに。


「...一体なんなのよ」

ボソッと呟いた私の声に反応してか

「唯ってホント記憶力ねぇよな」

陽に呆れたように笑われた。


『何でそこまで陽に言われなきゃいけないのよ!』

なんて言おうかと思ったけど記憶力なんてもの、私にないことは明白すぎることなので何も言わない。

またバカにされるに決まってる。


大人しく陽についていくことが今は一番。

そう思って 口を閉じた。