ハァと深〜いため息をつく。

こんな気持ちのままじゃ陽に失礼か。


お母さんにも

「ため息なんてついたらせっかく可愛いのに勿体ないわよ」

なんて注意されてしまった。


確かに浴衣は白地にピンクの朝顔と可愛らしい。

久坂さんなら似合うんだろうなー...とマイナス思考に陥る。


このままではいかんと両頬をぺチンと軽く叩く。

多分 目は覚めた。



陽は夏祭りに久坂さんじゃなくて 私を選んでくれた。

今はそれだけでいい。

それが真実だから。



なんだかんだで無駄口を叩きながらも すぐに着付けは終わった。

「お母さんありがとね!」

真っ赤な鼻緒の下駄を履いていこうと玄関に移動。


...しようと思ったら お母さんが満面の笑みで私の肩を掴んでいる。

「ちょっと待ちなさい」

「な、何?」

「化粧、しないといけないわよね?
それと髪も上げないといけないわ
唯は確かにそのままでもかなり可愛いわよ?
でも、折角のデートですもの
気合の入れすぎってことはないと思うわ」

口早にお母さんが言ってきた。

目がランランとしててちょっと...いや、かなりこわい。

これは断れない。


「お願いします...」

小さな声で言っていた。